前回に引き続きポケモンの話。今度は禁止伝説解禁戦について考察してみる。とはいっても巷で人気の BWGS ルールクリスマスカップではなく、あくまでシングルの制限なし解禁戦である。ワイヤレスで制限なしに設定することで遊べる 6 vs 6 のアレである。

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まずは一般的な格付けを見てみよう。 BW2 発売を記念して作成された有名なこの画像が参考になる。

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上へいくほど強いという構図であり、アルセウスとミュウツーをトップ 2 としている。まあ概ねあっているようではあるが、雫ラティオスの位置がちょっと高すぎるなど細かい突っ込みどころもある。今回はシングル解禁戦なのでそれにスポットを当てて自分の見解を述べよう。

BW2 での環境変化要因

従来の第 4 世代と比較して大きく環境を変化させる要因は 2 つあると思う。ひとつはマルチスケイルルギアの登場、もうひとつはホワイトキュレムの登場である。まずはここから説明する。

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ルギア

壊れ特性マルチスケイルを手に入れ要塞と化したルギア。マルチスケイルといえばあの絶滅危惧種だったカイリューを一気に BW のトップメタまで押し上げたおなじみのバランスブレイカー特性である。これを超耐久のルギアが手に入れたのだからたまらない。前世代までは禁止伝説中最低ランクとまで言われていたルギアだがこれで一気にトップクラスの実力の座へと躍り出た。その耐久力は C145 から繰り出される弱点のタイプ一致必中雷を楽々耐えるという異常な性能である。ひかえめスカーフカイオーガのしおふきですら半分程度しか削れない。特攻特化眼鏡ディアルガの竜技など楽々耐える。この耐久からおなじみ電磁波羽休め戦法で電磁波を撒きまくることで、相手の手持ちの速攻型アタッカーをどんどん機能停止にできてしまう。主要な型を紹介する。

個体値 31-31-31-31-31-31
努力値 252-0-0-6-0-252
性格 おくびょう
技 エアロブラスト だいちのちから でんじは はねやすめ
持ち物 たべのこし

S110 を生かすためにも最速。電磁波羽休めは確定。残りは選択だが瞑想を入れてしまうと攻撃技がひとつしかなく PP や範囲の面で不安が残る。個人的には積み技を諦めて電磁波撒きに徹するのが良いと思う。補完を考えると飛行と地面技の組み合わせは範囲が広くディアルガなどを落とせるのが良い。あるいはサイコショックとれいとうビームという組み合わせも良いだろう。カイオーガのしおふきを耐えて電磁波を一発、そのあと羽休めでマルチスケイルを復活させることができる。ほとんどのスカーフドラゴンやミュウツーもこの調子で機能停止を狙える。すなわち火力ブチ切れ状態の禁止伝説戦に強力な受けポケが現れたことでいままでの環境がガラリと変わることになる。なお弱点の雷を食らってもタイプ不一致などではまず落ちないし、麻痺しても相手に電磁波をとにかく一発当ててしまえば互いに麻痺状態の中で先制できるため持ち前の素早さも必ずしも腐りはしない。

n646

キュレム

レシラムと合体することでホワイトキュレムへとフォルムチェンジしたキュレム。また特性ターボブレイズによりルギアのマルチスケイルを無視して弱点の氷技をタイプ一致で繰り出すことができる。このホワイトキュレムを使うにあたりポイントになるのはその持ち物である。まず最速スカーフの場合、 HP 満タンのルギアは確定で耐える。そうすると電磁波を貰うことになるため、その後の運ゲでたとえ突破できても速度が死んでしまう。死に出しで出されたドラゴンにやすやすと狩られてしまうことになるわけである。眼鏡や命の珠といった強化アイテムを持たせた場合、一致氷技でルギアを一撃で落とすことができる。ただしこの場合問題になるのは S95 という中途半端な素早さである。次に繰り出されたパルキアや雫ラティオスといったドラゴンとタイマンで勝つことができない。ホワイトキュレムは C170 というデオキシスアタックフォルム並の超火力であるため、タイプ一致技をひたすら連打しているだけでも強く、ドラゴンが大量に飛び交う禁止伝説戦を考慮するとスカーフ以外の選択肢はなかなか無いのではないかと思う。しかしスカーフを持つとなると今度はルギアに電磁波で止められてしまうわけでなんとも悩ましい。

個体値 31-31-31-31-31-31
努力値 6-0-0-252-0-252
性格 おくびょう
技 ふぶき りゅうせいぐん だいちのちから クロスフレイム
持ち物 こだわりスカーフ

少なくともスカーフを巻いた自分より速い竜以外にはタイマンで勝つことができる。 S90 が激戦区なことを考えると最速が良いだろうか。

n382

カイオーガ

ダイパ時代には最強のポケモンとも言われ第 4 世代でも余すところ無くその存在感を見せつけた水ポケの最高峰。かつては自ら雨を降らせて最速スカーフからのしおふきでほとんどのポケモンを次々と確定で落としたものである。しかし時代は変わった。いまやルギアを繰り出されるだけでやすやすとフルパワーのスカーフ雨しおふきを止められてしまうのである。またホワイトキュレムの登場により最速スカーフドラゴンが一気に環境に増えることが予想される。この場合、先に相手からの打点を貰うことによりフルパワーでしおふきが撃てない可能性が高まる。一般の制限ありバトルならともかく解禁戦においてはスカーフ持ちが多々いる可能性があるため、もともとの S が 90 しか無いのでスカーフを巻いても必ずしも先手を打てるとは限らないのだ。とはいえスカーフからの先手しおふきで後述する H4 振りミュウツーやダークライを上から殴って高乱数で落とせるのは大変なメリットでありこれまた悩ましいところである。まとめるとスカーフはルギアに止められて電磁波で機能停止される、しかしスカーフじゃないとミュウツーやダークライを落とせない、ミュウツーやダークライはルギアを落とせるという三すくみ状態になるわけである。ここでひとつこの膠着状態を打破するための眼鏡ドロポン型を紹介しよう。

個体値 31-31-31-31-31-31
努力値 252-0-0-252-0-6
性格 ひかえめ
技 ハイドロポンプ かみなり 選択
持ち物 こだわりメガネ

あえて先手は取られるものと諦め、重火力鈍足アタッカーとしてカイオーガを運用する型である。たとえ電磁波を喰らっても必中雷でルギアに負荷を与えることができる。また耐久に振っているので腐りにくい。ただしスカーフしおふき型で狩れたミュウツーには不利になるので注意である。

n484

パルキア

カイオーガ率いる雨パのアタッカーでもあり、水 1/4 の耐性によりカイオーガを狩れる竜。従来ならハバンのみ持ちなどが主流だったが、先述したスカーフホワイトキュレムの増加を受けてスカーフ型が増えるのではないかと予想される。 S100 のため S95 のキュレムを上から殴ることができ一貫性の高い亜空切断で突破することができる。

個体値 31-31-31-31-31-31
努力値 6-0-0-252-0-252
性格 おくびょう
技 あくうせつだん なみのり 選択
持ち物 こだわりスカーフ

タイマンでキュレムを落とせるというのは大変なメリットで、死に出しからキュレムの抜きを止められるのだが、今度はスカーフなのでルギアに圧倒的に弱くなるというこれまた悩ましいことになる。こう考えてもマルスケルギアの登場がいかに環境変化要因として大きいかがわかる。要はルギアで相手の速攻型アタッカーをいかに機能停止できるか、いかに先に相手のルギアを落とせるか、このあたりが勝負になるのである。

n491

ダークライ

さてルギア対策としても機能するためますますその地位を高めつつあるのがこのダークライである。なにしろ S125 の素早さから対面で先手を取ってダークホールで相手を眠らせ、強力な特性ナイトメアで削り殺すというハメ技のような戦術が強力なのである。ただし相手のラムカゴには圧倒的に弱い。そう考えるとルギアもダークライ対策あるいは同族対策としてラムのみを持たせたほうが良い可能性もある。だがその場合は耐久が犠牲になるわけでこれまた悩ましい。

個体値 31-31-31-31-31-31
努力値 6-0-0-252-0-252
性格 おくびょう
技 ダークホール みがわり あくのはどう 選択
持ち物 こうかくレンズ

シングル解禁戦においてはルギア同様ダークライも勝敗に影響を与える重要なポケモンである。そう考えても電磁波を食らった重火力カイオーガがスカーフしおふき型より重宝する理由がわかるだろう。ルギアに電磁波を貰って麻痺したカイオーガをダークホール読みで繰り出すなんてことも一応可能なのである。その場合ダークライ側は眠り技を使えないので行動不能にさえならなければ重火力でダークライを落とせることになる。

n150

ミュウツー

スカーフ以外の竜を上から殴れるミュウツーの需要も増すだろう。相手が眼鏡ホワイトキュレムの場合先手を取って落とすことができる。スカーフカイオーガには不利だが後出しを許さないのでルギアへの交換で止められるし、スカーフ自体が環境的に減少傾向となり結果的にミュウツーが使いやすくなる可能性がある。問題は持ち物である。珠か眼鏡を持つかあるいは控えめにしないと H4 振りパルキアに耐えられてしまい反撃で落とされる。しかしルギアやダークライを意識するならラムのみを持ちたい。ここは悩ましいところで立ち回りあるいは運次第というところである。またミュウツーはみがしば、こだわりトリック等をはじめとして実に手数が豊富であり、その器用さも強さの一翼を担っている。ここではあえて型は書かないでおこう。

n493

アルセウス

創造神であり相変わらずポケモン界最強クラスの実力を誇り万能なアルセウス。とはいえ強いのはどうせ剣舞神速型だろうということで、ガチ対戦ではある程度手の内を予想できなくもない。一発耐えて剣舞を積んでからの神速による抜き性能はもはや説明不要であり、シングル解禁戦においては一度ハマると一気に全抜きされかねない要注意ポケモンとなる。通常は性格いじっぱりで HA 振りするのだが、同族対決の多さを考えるとようきという選択肢も考えられる。なにしろ神速を止められるのは神速なのだから。著名な型を書いておく。

個体値 31-31-31-31-31-31
努力値 252-252-0-0-0-6
性格 いじっぱり
技 しんそく つるぎのまい 選択
持ち物 シルクのスカーフ / いのちのたま / もののけプレート

n381

ラティオス

ラティオスなんて準伝説じゃんと思うかもしれないが、ここで扱うのは心の雫を持たせた通称雫ラティオスのことである。最初に掲げた図では雫ラティオスとラティアスがずいぶんと高い位置に挙げられているが、そもそもこいつらは持ち物固定であるためスカーフを持てない。これではスカーフドラゴンが飛び交う環境においては先手を取られて落とされてしまう。むしろ S110 を生かしたスカーフラティオスのほうがスカーフ持ちのパルキアやキュレムを落とせるのでまだ活躍できるのではないだろうか。オリジンフォルムギラティナにも言えることだが、解禁戦において持ち物固定というのは想像以上のデメリットをもたらすのである。

n487

ギラティナ

ギラティナなんてオワコンじゃんと思うかもしれないが、剣舞神速アルセウスを止められ、ミュウツーをかげうちで確 2 で落とせるギラティナにもワンチャンある。諸々を考慮するとスカーフを持たせる型が強い。オリジンフォルムは地震を無効化できるものの持ち物固定のためスカーフを持てないのでやや使いづらい。終盤で相手がミュウツーやアルセウスによる抜きに出た時にギラティナを繰り出すとうまく行動を制限できる。とはいえこれも相手が霊対策にシャドーボールやシャドークローを持っていたら突破される上、ギラティナ側も火力不足でなかなか決定打を与えられないので、やはりワンチャンすら厳しいかもしれない。

n483

ディアルガ

ディアルガといえば竜と氷を弱点としない我らが主砲じゃんと思うかもしれないが、逆風が吹いているのがこのディアルガである。かつてはパルキアと並び優秀なタイプで重火力アタッカーとして名を馳せたものだが、いまや眼鏡ホワイトキュレムの一致吹雪で H252 振りディアルガが確 1 で落とされるのである。なんという恐ろしいキュレムの火力であろうか。また積み技も無いためルギアの強硬な装甲を突破することも出来ない。そうなると S90 という足の遅いこの竜はオワコンだろうか。トップ集団からの凋落の日は近いかもしれない。

まとめ

いろいろ書いたが、結局のところ禁止伝説解禁戦では相手も自分も最強クラスの禁止伝説ポケモンを使うわけで、あとは差別化するとしたら持ち物程度のものである。いかに相手の状態異常技がうまく自分のラム持ちに刺さってくれるかが鍵というほとんど運ゲになってしまう。もちろん一般ポケやら昆布戦法やらを出してもいいのだが、通常のバトル以上に機能させるのが難しい。あとは所詮禁止解禁戦なのでバトルのサンプル数が少なく有意なデータに基づいたことが言えないのも考察を難しくしている。ひたすらシミュレーションを繰り返すだけの机上での討論になりがちである。

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