Xfce4 へ移行した

背景と目的

Debian 13 を導入したが、これまで Debian/Ubuntu 環境では主に GNOME Flashback を利用してきた。しかし、余計な機能を抱え込みつつアップデートのたびに将来的な互換性への懸念が増す状況にあり、環境の軽量化と安定維持を目的として、以前も一時期利用したことのある Xfce4 へ移行した。


Xfce とは

軽量デスクトップ環境 (Desktop Environment, DE) のひとつ。リソース消費を抑えつつフル機能のデスクトップ環境を提供することを目的にしている。

プロジェクトの目的・特徴

  • 軽量で高速:古いハードウェアやリソースの限られた環境でも快適に動く。
  • シンプルで伝統的:パネル、アプリケーションメニュー、タスクバー、ファイルマネージャなど、従来型のデスクトップ操作感を重視。
  • モジュール構造:パネル(xfce4-panel)、ファイルマネージャ(Thunar)、ウィンドウマネージャ(xfwm4)などが独立して開発。必要に応じて置き換え可能。
  • 堅実な技術選択:GTK を利用、Wayland 対応は進めているが慎重。

知名度

  • 主要ディストリビューションで公式サポート:Debian, Ubuntu (Xubuntu), Fedora, Arch などで標準パッケージとして提供。
  • 長寿命プロジェクト:1996年開始、20年以上続いている。
  • 認知度は高い:「GNOME」「KDE」に次ぐ選択肢として必ず名前が挙がる。

人気

  • 人気度:Linux デスクトップ環境の中では常に上位。
  • DistroWatch や各種ユーザー調査でも「軽量 DE」として定番。

ユーザー層

  • 古い PC を延命したい人
  • システム管理者(GUI は軽く最低限でよい層)
  • GNOME/KDE の重さやデザイン変更を避けたい保守派
  • X11 ベースの安定動作を求めるユーザー

本システムの用途

  • Xfce4 Terminal
  • Emacs
  • ブラウザ(性能は問わず)
  • VMware Workstation Pro の管理用 GUI

要求されるのは 2D 描画とシンプルな GPU アクセラレーションに過ぎない。このため、現行の Quadro K600 + nouveau の組み合わせで十分であり、今後の Debian 14, 15 においても同様の運用が可能であると判断した。

GNOME Flashback の限界

GNOME Flashback は GNOME Shell より軽量であるものの、依然として GTK3 系ライブラリ群に依存する。compositor (Mutter/Metacity) を前提とするため、Kepler 世代 GPU + nouveau 環境では描画遅延やグリッチが顕在化する可能性が高い。

さらに、GNOME プロジェクト全体が Wayland への移行を加速していることから、Xorg 前提の Flashback セッションは今後扱いにくくなることが予測される。

Xfce4 の選択理由

Xfce4 は軽量・安定を重視したデスクトップ環境であり、以下の点で本環境に適している。

  • Xorg 前提であり、Kepler + nouveau との相性が良い。
  • 必要な機能(パネル、アプリケーションメニュー、端末、Emacs 起動ランチャー)は揃っている。
  • xfwm4 の簡易コンポジティングはオフにでき、描画が不安定な場合でも非コンポジットで安定運用できる。
  • Debian を含む主要ディストリビューションで標準的にサポートされ、長期的に利用可能である。

Xfce4 の設定

設定については最低限の手数で軽量化を実現することを目的とした。

LightDM と GRUB の背景無効化

まず Xfce4 以前の軽量化として GRUB のブート画面や lightdm のログイン画面の不要な背景を削除し、純粋なテキスト表示に戻した。

/etc/default/grub を編集し以下の行を追記することで GRUB は素の画面に戻り、統一感のある軽量環境を実現した。

GRUB_BACKGROUND=
GRUB_THEME=""

設定ファイル編集後は sudo update-grub して再起動すると反映される。

lightdm については /etc/lightdm/lightdm-gtk-greeter.conf に以下を設定する。

[greeter]
background = #000000
# 好みに応じて #111111 など

日本語入力

fcitx5 + mozc を採用。設定は ~/.config/fcitx5/profile を調整し全ユーザーに適用。デフォルトレイアウトを jp に設定し、日本語入力を安定的に利用可能とした。

# user1 から user2 に設定を移行する例
sudo install -m 644 -o user2 -g user2 /home/user1/.xinputrc /home/user2/.xinputrc

# fcitx5 のプロファイルをコピー
sudo mkdir -p /home/user2/.config/fcitx5
sudo cp -a /home/user1/.config/fcitx5/* /home/user2/.config/fcitx5/
sudo chown -R user2:user2 /home/user2/.config/fcitx5

# mozc の個人辞書なども必要なら
sudo rsync -a /home/user1/.local/share/fcitx5/ /home/user2/.local/share/fcitx5/ 2>/dev/null || true
sudo chown -R user2:user2 /home/user2/.local/share/fcitx5

環境構築の自動化

スクリプト debian_xfce_setup.sh を作成した。以下を自動設定する。

  • 外観設定(Adwaita-dark テーマの適用)
  • パネルの整理(不要な panel-2 の削除)
  • 壁紙を無効化(黒背景)
  • 電源管理無効化(ディスプレイオフやサスペンド停止)
  • 自動起動エントリ(xmodmap, xset-rate, xfce4-terminal プロファイル適用)

これにより冪等性のある再現性の高い環境構築が可能となった。

Google Chrome の導入

ブラウザは Google Chrome を選択した。互換性を優先し、スクリプト install_google_chrome.sh を作成した。

設定の引き継ぎは ~/.config/google-chrome/ を丸ごと転写することでブックマーク・拡張機能を含めた環境を再現できた。


まとめ

将来の Debian アップグレードを踏まえた軽量なデスクトップ環境を実現できた。

見通しと注意点

  • Debian 14, 15 でも問題なく利用可能: 2D 描画と軽度の GPU アクセラレーション中心であるため、現行の nouveau + Kepler 環境でカバー可能。
  • Wayland 移行の影響: デフォルトが Wayland に移る可能性はあるが、lightdm + Xfce4 を選択することで Xorg 継続利用が可能。
  • ブラウザ: 問題なく動作。ただし動画再生ではハードウェアデコードが無効になり CPU 負荷が増す。管理用途であれば許容範囲。
  • VMware Workstation Pro: GTK ベースの GUI 管理画面であり、3D 性能を必要としないため支障はない。
  • phantom 出力や警告: nouveau 特有のログ出力であり、運用上の障害とはならない。

結論

  • Debian 14, 15 に移行しても GUI 管理環境は問題なく維持できる。
  • Xfce4 + Xorg + nouveau の組み合わせは軽量かつ安定。
  • GNOME Flashback は今後の互換性リスクがあるため、移行判断は合理的である。
  • ログに警告が増えても放置可能であり、管理用途に支障はない。

Xfce4 は軽量・堅実・長寿命のデスクトップ環境であり、管理用途における最適解である。

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