前回の記事では、Debian 系 GNU/Linux 環境で local の GUI と remote の GUI を併用する構成を整理し、xrdp を利用する場合に発生しやすい黒画面やログイン直後の切断といった現象を、Linux の GUI セッション構造という観点から整理した。そこで確認した重要な点は、xrdp が既存の local 画面をそのまま共有する仕組みとして理解するよりも、xrdp-sesman がユーザー認証を行い、適切な X server を起動して GUI セッションを開始する仕組みとして理解した方が実態に近いという点である [1]。
この前提に立つと、local GUI と remote GUI を同一ユーザーで同時に扱う場合には、単に「画面が二つある」という話では済まない。Linux のデスクトップ環境では、ログインごとに session bus が生成され、アプリケーション間通信はその bus を前提に動作する。また systemd-logind と pam_systemd はログインセッションと user runtime directory を管理し、各ログインに紐づくユーザー空間の state を形成する [2][3][4]。したがって remote GUI を安定して運用するためには、デスクトップ環境自体の軽さだけでなく、設定構造やセッション構造がどの程度理解しやすいかを重視して選ぶ必要がある。
この観点で見ると、Xfce は単に軽量なデスクトップ環境だから有力なのではない。Xfce の本質的な利点は、設定管理の構造が比較的透明であり、各機能が分離されていて把握しやすい点にある。実際、Xfce の設定は xfconf という設定システムで管理されつつ、実体はホームディレクトリ配下の設定ファイルとして保持される [5][6]。
しかし、Xfce を実務で扱おうとすると別の問題が現れる。GUI からは簡単に設定を変更できても、その変更がどのファイルに保存され、どこまでが安全に移行可能で、どこからが環境依存になるのかは直感的には分かりにくい。特に複数マシン間で設定を再現したい場合や、dotfiles として設定を管理したい場合には、この構造をあらかじめ明示的に整理しておく必要がある。
そこで本稿では、Xfce の設定保存構造を確認した上で、主要な設定ファイルとその役割、実務上重要になる管理対象、環境移行時の注意点を体系的に整理する。
1. Xfce の設定保存構造
Xfce の設定を理解する上で最初に押さえるべきなのは、Xfce が単なる XML 設定ファイルの集合ではなく、xfconf という設定システムを中心に構成されているという点である。xfconf は階層型の設定システムであり、最上位にチャンネル、その下にプロパティを持つ構造を採用している [5]。たとえばパネルは xfce4-panel、ウィンドウマネージャーは xfwm4、デスクトップは xfce4-desktop といったチャンネルに分かれ、それぞれが独立した設定単位として扱われる。
一方で、利用者が実際に触れる設定の実体は、通常はホームディレクトリ配下の ~/.config/xfce4/xfconf/xfce-perchannel-xml/ に保存される XML ファイル群である。この配置は、アプリケーション設定を ~/.config に保存するという XDG Base Directory Specification の流れとも整合している [7]。したがって、Xfce の設定を確認する際には「xfconf という設定システム」と「その結果が保存される XML ファイル」の両方を区別して理解する必要がある。
1 2 3 4 5 6 7 8 | ~/.config/xfce4 ├─ xfconf │ └─ xfce-perchannel-xml │ ├─ xsettings.xml │ ├─ xfce4-panel.xml │ ├─ xfce4-keyboard-shortcuts.xml │ ├─ xfce4-power-manager.xml │ └─ xfwm4.xml |
ここで重要なのは、このディレクトリを見れば Xfce の設定を完全に把握できると断定してはいけないという点である。多くのユーザー設定の実体はたしかにこの配下に保存されるが、xfconf にはデフォルト値や kiosk mode の仕組みがあり、利用者が見ている XML だけが有効値の全体であるとは限らない [5]。したがって、実務上は「多くのユーザー設定の実体を観測できる主要な保存場所」と理解するのが正確である。
この整理をすると、Xfce の設定は次の三層で把握できる。すなわち、設定全体を扱う基盤としての xfconf、機能単位の論理グループとしての channel、そしてユーザー設定の実体としての XML ファイルである。Xfce の設定管理が比較的分かりやすいのは、この三層構造が人間にも追跡しやすい形で露出しているためである。
| 層 | 役割 | 具体例 |
|---|---|---|
| 設定システム | Xfce 全体の設定を管理する基盤であり、設定値の読み書きと通知を担う。 | xfconf |
| 設定チャンネル | 機能単位で設定を分ける論理グループであり、設定の分類単位になる。 | xfce4-panel、xfwm4、xsettings |
| 設定ファイル | ユーザー設定の主要な保存実体であり、移行やバックアップ時の管理対象になる。 | xfce4-panel.xml、xfwm4.xml、xsettings.xml |
2. 主要設定ファイルの一覧
Xfce の設定は機能ごとにチャンネルへ分割され、その主要部分が XML ファイルとして保存される。この構造の利点は、設定の役割を機能単位で切り分けて把握しやすい点にある。外観、パネル、ショートカット、ウィンドウ管理、デスクトップ、電源管理といった主要な関心事が、そのまま設定ファイルの単位にかなり近い形で現れるためである [5][6]。
実際に多くの Xfce 環境で中核になる設定ファイルは次のとおりである。ここで列挙する 6 つは、日常操作、外観、レイアウト、電源挙動に直結するため、Xfce の設定を理解する出発点として最も重要である。
| ファイル名 | 管理対象 | 主な内容 |
|---|---|---|
| xsettings.xml | GTK 外観設定 | テーマ、フォント、アイコンテーマ、カーソルテーマなど、GTK 系アプリケーション全体の見た目に関わる設定を保持する。 |
| xfce4-keyboard-shortcuts.xml | キーボード操作 | アプリケーション起動キー、ウィンドウ操作、ワークスペース切替などのショートカット設定を管理する。 |
| xfce4-panel.xml | パネル | パネル数、位置、長さ、表示方式、プラグイン構成など、パネル全体の骨格を保持する。 |
| xfce4-power-manager.xml | 電源管理 | 画面オフ、サスペンド、電源ボタン動作、バッテリー関連挙動などを定義する。 |
| xfwm4.xml | ウィンドウマネージャー | フォーカス方式、装飾、ワークスペース数、タイトルバー挙動などのウィンドウ管理設定を保持する。 |
| xfce4-desktop.xml | デスクトップ | 壁紙、デスクトップアイコン、背景表示など、デスクトップ領域の表示設定を管理する。 |
この一覧から分かるように、Xfce は設定を「人間が意味で理解しやすい単位」で分離している。GNOME 系では GSettings と dconf が中核になり、設定バックエンドは dconf を利用できるが、Xfce では XML ファイルという形で設定の所在を直接追いやすい [8][9]。この違いは、単なる実装差ではなく、長期運用時の把握しやすさに直結する。
3. 各設定ファイルの役割
設定ファイルの一覧だけでは、実際にどの変更がどこへ保存されるのかがまだ抽象的である。そこで本章では、主要 6 ファイルについて、実際にどの種類の設定が入り、どのような場面で重要になるかを整理する。環境移行や dotfiles 管理を行う際には、この対応関係が明確であるほど作業の見通しがよくなる。
3.1 xsettings.xml
xsettings.xml は外観に関する中核ファイルである。Xfce の Appearance 設定では、GTK テーマ、アイコンテーマ、フォントなどを変更できるが、これらは最終的に外観チャンネルの設定として保持される [10]。見た目を再現したい場合、このファイルの重要度は非常に高い。
| 主な設定項目 | 内容 |
|---|---|
| ThemeName | GTK テーマを指定し、ウィジェット全体の外観を決定する。 |
| IconThemeName | アイコンテーマを指定し、ファイラーやメニューの見た目に影響する。 |
| FontName | GTK アプリケーションで用いる標準フォントを指定する。 |
| CursorThemeName | カーソルテーマを指定し、ポインター表示を制御する。 |
3.2 xfce4-keyboard-shortcuts.xml
xfce4-keyboard-shortcuts.xml は操作体系を支えるファイルである。Keyboard 設定ではショートカットを追加・変更でき、アプリケーション起動やウィンドウ操作をキー操作へ割り当てられる [11]。操作習慣を固定している環境では、このファイルを失うと体感上の違和感が大きい。
| 主な設定項目 | 内容 |
|---|---|
| commands | 任意のキー組み合わせに対して起動するコマンドを定義する。 |
| xfwm4 | ウィンドウ移動、最大化、ワークスペース移動などの操作キーを保持する。 |
3.3 xfce4-panel.xml
xfce4-panel.xml はパネルの骨格を管理するファイルである。Panel Preferences ではパネルの位置、長さ、表示モード、モニター割当、項目構成などを変更できる [12]。したがって UI レイアウトを再現したい場合、このファイルは中心的な管理対象になる。
ただし、ここは最重要注意点でもある。Xfce Panel の公式文書は、パネルが GUI だけでなく hidden Xfconf settings や GTK 側の設定とも関わることを示している [13]。また panel profiles という専用ツールが「レイアウトのバックアップ・復元・インポート・エクスポート」を提供していることからも、実務上のパネル再現は xfce4-panel.xml だけで常に完結すると考えるべきではない [14]。実際には ~/.config/xfce4/panel/ 以下のプラグイン関連ファイルや、テーマ側の設定が絡む場合もある。
| 主な設定項目 | 内容 |
|---|---|
| panels | パネル数、位置、長さ、表示方式など全体の骨格を定義する。 |
| plugins | どのプラグインをパネルへ載せるかを管理する。 |
| launchers | ランチャー構成と結び付く設定の起点となる。 |
3.4 xfce4-power-manager.xml
xfce4-power-manager.xml はノート PC や省電力運用で重要になるファイルである。Power Manager では、画面オフ、サスペンド、電源ボタン、バッテリー状態などの設定が行える [15]。同じユーザー設定でも、これはハードウェア差の影響を受けやすい。
| 主な設定項目 | 内容 |
|---|---|
| dpms | ディスプレイ電源管理の挙動を保持する。 |
| sleep-mode | サスペンドや休止の動作方針を定義する。 |
| button actions | 電源ボタンや蓋の開閉時の反応を管理する。 |
3.5 xfwm4.xml
xfwm4.xml はウィンドウ管理の挙動を保持する。Xfwm4 は Xfce のウィンドウマネージャーであり、装飾やフォーカス挙動、ワークスペース運用など、日常操作に直結する設定を持つ [16]。見た目よりも操作感に影響しやすいファイルである。
| 主な設定項目 | 内容 |
|---|---|
| workspace_count | ワークスペースの数を定義する。 |
| focus_mode | クリックフォーカスなどの方式を指定する。 |
| theme | ウィンドウ装飾テーマを管理する。 |
3.6 xfce4-desktop.xml
xfce4-desktop.xml は背景とデスクトップ領域を担当する。Desktop 設定では、壁紙、アイコン、背景表示などが管理される [17]。外観再現では重要だが、壁紙パスのように環境差で壊れやすい項目も含まれる。
| 主な設定項目 | 内容 |
|---|---|
| image-path | 壁紙に使用する画像ファイルのパスを定義する。 |
| icons | デスクトップアイコン表示の有無や方式を管理する。 |
| backdrop settings | ワークスペースごとの背景表示や描画方式を保持する。 |
4. 実務上重要となる管理対象
Xfce の設定を理解したからといって、実務で全ファイルを同じ重みで管理する必要はない。重要なのは、どのファイルが「ユーザー環境らしさ」を強く規定し、どのファイルが環境依存で壊れやすいかを区別することである。この区別ができていないと、dotfiles 管理は過剰に肥大化し、逆に移行時の事故も増える。
まず優先度が高いのは xsettings.xml と xfce4-keyboard-shortcuts.xml である。前者は外観、後者は操作体系を保持するため、移行時の体感差を最も大きく左右する。次に xfwm4.xml は、ワークスペース数やフォーカス方式などの作業感覚に影響するため、優先管理対象として妥当である。一方で xfce4-panel.xml は重要ではあるが、モニター構成やプラグイン依存があるため、単純コピーで済むとは限らない。xfce4-power-manager.xml はさらにハードウェア依存が強く、マシンが変わるとそのままでは適切でないことがある。
| 設定ファイル | 管理対象 | 優先度 | 理由 |
|---|---|---|---|
| xsettings.xml | 外観 | 高い | テーマ、フォント、アイコンが変わると環境全体の印象が大きく変わるためである。 |
| xfce4-keyboard-shortcuts.xml | 操作体系 | 高い | 日常操作の癖が反映されるため、失われると作業効率に直結して影響するためである。 |
| xfwm4.xml | ウィンドウ管理 | 中程度 | 作業スタイルに影響するが、外観やショートカットほど移行不能性は高くないためである。 |
| xfce4-panel.xml | パネル構成 | 中程度 | 重要ではあるが、解像度、モニター数、プラグイン構成、追加ファイルの影響を受けやすいためである。 |
| xfce4-power-manager.xml | 電源管理 | 低め | ノート PC、デスクトップ、外部電源有無などハードウェア条件で最適値が変わりやすいためである。 |
このように整理すると、Xfce の設定管理は「全部保存する」よりも「影響が大きいものから優先管理する」と考える方が実用的である。特に複数マシンで共通化したい場合は、外観と操作体系を最優先にし、パネルと電源管理は環境差を見ながら調整する方が安定しやすい。
5. 設定確認と変更の方法
Xfce の設定を扱う方法は大きく三つある。第一に GUI 設定ツールを用いる方法、第二に xfconf-query で論理的な設定値を確認する方法、第三に XML ファイルを直接管理する方法である [6][18]。重要なのは、これらが排他的な方法ではなく、目的に応じて役割分担させるべき手段だという点である。
日常の設定変更では GUI を使うのが自然である。Xfce Settings Manager は設定ダイアログへの入口を集約しており、見た目・入力・デスクトップ・電源などの多くを視覚的に変更できる [6]。一方で、どの設定がどのキーに保存されているかを調べたい場合には xfconf-query が有効である。xfconf-query は Xfconf に保存された設定を CLI から表示・変更でき、現在値の確認やスクリプト化に向く [18]。
たとえば、利用可能なチャンネルの把握や、特定チャンネルの設定確認には次のようなコマンドが使える。
1 2 3 4 5 | # List all Xfce configuration channels xfconf-query -l # Show all properties of the panel configuration xfconf-query -c xfce4-panel -lv |
一方、環境バックアップやマシン移行という観点では XML ファイル管理が有効である。論理構造の確認には xfconf-query、実体の保全には XML ファイル、日常変更には GUI という役割分担にすると、Xfce の設定管理はかなり整理しやすくなる。
| 方法 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| GUI 設定ツール | 視覚的に設定を変更でき、日常利用に向く。 | 通常の設定変更、試行錯誤、画面を見ながらの調整 |
| xfconf-query | 設定キーを CLI から確認でき、現在値の把握に強い。 | 調査、自動化、差分確認、スクリプト化 |
| XML ファイル管理 | 設定の主要実体をファイル単位で保全できる。 | バックアップ、環境移行、バージョン管理 |
6. バックアップと環境移行の考え方
Xfce の設定移行で大切なのは、単に ~/.config/xfce4 を丸ごとコピーすることではない。もちろん一括バックアップは可能であり、最も簡単な方法でもある。しかし実務では、どの設定が安全に持ち運べて、どの設定が新しい環境で崩れる可能性があるかを事前に切り分けておく方が安定する。
たとえば外観設定やショートカット設定は比較的安全に移行しやすい。これに対してパネル設定は、モニター数や解像度の差で見え方が変わりやすい。また電源管理は、ノート PC とデスクトップ、あるいは同じノート PC でも電源管理デーモンやファームウェア差で期待どおりに再現できない場合がある。したがって「安全にコピーしやすい設定」と「環境差を受けやすい設定」を分けて考えることが重要である。
一括バックアップ自体は、たとえば次のように行える。
1 | tar czf xfce-settings-backup.tar.gz ~/.config/xfce4 |
ただし、これはあくまで保全手段としては有効でも、常にそのまま全投入するのが最善とは限らない。むしろ新しい環境では、まず xsettings.xml と xfce4-keyboard-shortcuts.xml、必要に応じて xfwm4.xml を投入し、その後でパネルや電源管理を個別に確認する流れの方が事故が少ない。
| 移行対象 | 対象ファイル | 移行適性 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 外観設定 | xsettings.xml | 高い | フォントやテーマが新環境に未導入だと完全再現できない点に注意が必要である。 |
| ショートカット | xfce4-keyboard-shortcuts.xml | 高い | 呼び出すコマンドや実行パスが新環境でも有効であることを確認する必要がある。 |
| ウィンドウ管理 | xfwm4.xml | 中程度 | 概ね移行しやすいが、テーマや表示差で細部が変わることがある。 |
| パネル構成 | xfce4-panel.xml と関連ファイル | 環境依存 | モニター構成やプラグイン差、関連ファイル不足で崩れる場合がある。 |
| 電源管理 | xfce4-power-manager.xml | 低い | マシン固有の電源事情に依存するため、再設定前提で扱う方が安全である。 |
7. Xfce 設定構造の設計思想
ここまでを通して見えてくるのは、Xfce の設定構造が単に「昔ながらで軽い」から便利なのではなく、「設定の責務が分離され、利用者が把握しやすい」ように設計されているという点である。xfconf はチャンネル単位で設定を分け、主要なユーザー設定はホームディレクトリ配下の XML として追跡しやすい [5][6]。この透明性は、長期運用や dotfiles 管理に向く。
この特徴は GNOME 系の設定管理と比較すると分かりやすい。GSettings は設定 API であり、dconf はその代表的なバックエンドである [8][9]。GNOME でも論理的には整理された設定管理を持っているが、Xfce のように主要設定の保存実体をファイルとして意識しやすい構造とは体験が異なる。ここで重要なのは優劣を単純に決めることではなく、Xfce の方が「どこに何があるか」を追跡しやすい場面が多いという点である。
| 観点 | Xfce | GNOME 系 |
|---|---|---|
| 設定の中心概念 | xfconf のチャンネルと XML ファイル | GSettings と dconf バックエンド |
| 主要ユーザー設定の追跡性 | ファイルとして追いやすい | キー空間として追いやすいが保存実体は直接見えにくい |
| 長期運用での実感 | 所在把握と個別移行がしやすい | 論理的管理は強いが実体を直接触る運用には向きにくい |
この意味で、Xfce を remote GUI 運用や複数マシン運用で選ぶ理由は「軽さ」だけではない。設定と責務の境界が比較的見えやすいこと、壊れたときにどの層を確認すべきかを人間が推測しやすいことが、実務上の大きな利点になる。
8. GNOME Flashback と比較する
Xfce の設定構造をここまで整理すると、次に気になるのは「では GNOME Flashback と比べて何が違うのか」という点である。両者はどちらも GNU/Linux で広く利用できる軽量寄りのデスクトップ環境だが、設計思想はかなり異なる。Xfce は小さな構成要素を組み合わせて成り立つ単純で独立性の高い環境であり、設定の保存場所や役割を追いやすい。一方で GNOME Flashback は、見た目こそ比較的古典的で軽量に見えるものの、実体としては GNOME 系のセッション管理、設定基盤、各種サービスの上に構築される環境である。そのため、単純に「どちらが軽いか」だけで比較するよりも、構造、設定管理、障害解析、長期運用のしやすさという観点から比較した方が実態に合う。
特に Xfce の設定ファイルを直接確認しながら運用していると、Xfce の利点は単なる軽さではなく、構成の見通しの良さにあることがわかる。Xfce では、外観、パネル、ウィンドウ管理、電源管理、キーボードショートカットといった機能単位ごとに設定の所在が比較的明確であり、どこを見れば何が変わるのかを追跡しやすい。これに対して GNOME Flashback は、GNOME の設定基盤である dconf や gsettings、さらに gnome-session や gnome-settings-daemon のようなセッション側の仕組みと密接に結びついているため、設定変更の影響範囲が広く、トラブル時の切り分けもやや複雑になる。
したがって、単体マシンで「なるべく単純で、壊れにくく、追跡しやすい GUI 環境」を求めるなら Xfce の方が合理的である。一方で、複数ホストで GNOME 系の操作感をそろえたい、あるいは GNOME 系アプリケーションとの整合性を重視したい場合には、GNOME Flashback の方が運用上の利点を持つ。この違いを整理すると、両者の選択基準は次のようにまとめられる。
| 観点 | Xfce | GNOME Flashback | 評価 |
|---|---|---|---|
| 設計思想 | 軽量な独立コンポーネントの集合体 | GNOME コンポーネントを利用した軽量セッション | 性質が根本的に異なる |
| 構成の単純さ | 非常に単純 | GNOME 依存でやや複雑 | Xfce が有利 |
| 依存関係 | 少ない | 多い | Xfce が有利 |
| 常駐プロセス数 | 少ない | やや多い | Xfce が有利 |
| メモリ使用量 | 少ない | 中程度 | Xfce が有利 |
| 起動速度 | 速い | やや遅い | Xfce が有利 |
| 可観測性 | 高い | GNOME 内部処理が多くやや低い | Xfce が有利 |
| 設定の分かりやすさ | 設定ファイルの役割を追いやすい | dconf / gsettings 中心で抽象化される | Xfce が有利 |
| 設定管理の一元性 | 機能ごとに分かれる | dconf に集約しやすい | GNOME Flashback が有利 |
| 環境再現性 | 個別設定の把握が必要 | dconf dump / load により再現しやすい | GNOME Flashback が有利 |
| GNOME アプリとの整合性 | 動作はするが最適化は弱い | 高い | GNOME Flashback が有利 |
| GNOME 系ホストとの統一性 | 低い | 高い | GNOME Flashback が有利 |
| 安定性 | 高い | 高いが GNOME 側の影響を受ける | Xfce がやや有利 |
| upstream 変更の影響 | 比較的小さい | 受けやすい | Xfce が有利 |
| トラブル解析 | 容易 | やや複雑 | Xfce が有利 |
| IME や入力関連の追跡 | 比較的単純 | GNOME 側の管理が絡みやすい | Xfce が有利 |
| セッション構造 | 単純 | gnome-session 中心 | Xfce が有利 |
| SSH 管理端末用途 | 非常に適する | 使えるがやや過剰 | Xfce が有利 |
| 検証環境用途 | 非常に適する | やや複雑 | Xfce が有利 |
| 主力デスクトップ用途 | 十分可能 | より整った統一感を得やすい | GNOME Flashback がやや有利 |
| UI の統一性 | 弱い | 強い | GNOME Flashback が有利 |
| 長期運用での見通し | 高い | GNOME 基盤への依存を考慮する必要がある | Xfce がやや有利 |
| システム理解のしやすさ | 高い | 中程度 | Xfce が有利 |
この比較から見えてくるのは、Xfce の強みが「単純で軽いこと」だけではないという点である。より正確には、Xfce は構造が見えやすく、設定の所在が追いやすく、障害時の切り分けがしやすい。そのため、管理端末、検証端末、補助ノード、あるいは長期保守を重視する個人用マシンに向いている。一方で GNOME Flashback の強みは、GNOME 系環境との一貫性、設定エクスポートのしやすさ、アプリケーションとの整合性にあり、複数の GNOME 系ホストを並行運用する場合には一定の意味を持つ。
したがって、Xfce の設定を把握した上であえて結論を述べるなら、単体の運用対象としては Xfce の方が素直で扱いやすい。GNOME Flashback は「古典的な見た目の軽量デスクトップ」というよりも、「GNOME の設計思想を維持したまま比較的軽量に動かすためのセッション」と理解した方が実態に近い。つまり、両者の差は見た目ではなく、背後の構造にある。設定ファイルを自分で追い、環境を理解しながら運用したい場合には、Xfce の方が明らかに相性が良い。
9. まとめ
本稿では、Xfce の設定管理を、xfconf という設定システム、channel という論理構造、XML ファイルという保存実体の三層で整理した。重要なのは、Xfce の設定を単なる「設定ファイルの置き場」としてではなく、「論理構造と保存実体が比較的対応付けしやすい設定体系」として理解することである [5][7]。
その上で、実務上の重点は明確である。xsettings.xml と xfce4-keyboard-shortcuts.xml は優先的な管理対象であり、xfwm4.xml は必要に応じて追従させる価値が高い。これに対し、xfce4-panel.xml は重要ではあるが関連ファイルやプラグイン構成まで視野に入れる必要があり、xfce4-power-manager.xml はハードウェア差を強く受けるため慎重に扱うべきである [13][14][15]。
以上を踏まえると、Xfce は単に軽量なデスクトップ環境というだけではなく、設定の所在と責務が比較的見えやすいという意味で、長期運用、環境再現、remote GUI を含む複数環境運用に向いた設計を持つ。実務では、この透明性を活かして「何を保存し、何を再設定するか」を最初から分けて管理することが、最も安定した運用につながる。
参考文献
- xrdp-sesman(8). https://manpages.debian.org/testing/xrdp/xrdp-sesman.8.en.html
- D-Bus Tutorial. https://dbus.freedesktop.org/doc/dbus-tutorial.html
- pam_systemd. https://www.freedesktop.org/software/systemd/man/pam_systemd.html
- systemd-logind.service. https://www.freedesktop.org/software/systemd/man/systemd-logind.service.html
- xfconf – Configuration Storage System. https://docs.xfce.org/xfce/xfconf/start
- Xfce Settings Manager Documentation. https://docs.xfce.org/xfce/xfce4-settings/start
- XDG Base Directory Specification. https://www.freedesktop.org/wiki/Specifications/basedir-spec/
- Gio Overview. https://docs.gtk.org/gio/overview.html
- dconf. https://wiki.gnome.org/Projects/dconf
- Xfce Appearance Settings. https://docs.xfce.org/xfce/xfce4-settings/appearance
- Keyboard Settings – Xfce Documentation. https://docs.xfce.org/xfce/xfce4-settings/keyboard
- xfce4-panel – Preferences. https://docs.xfce.org/xfce/xfce4-panel/preferences
- xfce4-panel – Xfce Panel. https://docs.xfce.org/xfce/xfce4-panel/start
- Xfce Panel Profiles. https://docs.xfce.org/apps/xfce4-panel-profiles/start
- Xfce Power Manager Preferences. https://docs.xfce.org/xfce/xfce4-power-manager/preferences
- Xfwm4 – Xfce Window Manager. https://docs.xfce.org/xfce/xfwm4/start
- Desktop Settings – Xfce Documentation. https://docs.xfce.org/xfce/xfdesktop/start
- xfconf-query. https://docs.xfce.org/xfce/xfconf/xfconf-query