それが資本家になるための手段だから。

労働者はお金のために自らの時間や体力を消費して働く。お金のために働いているのである。組織の中で出世しようとも、株主によって選出され経営を任された取締役にならない限り、使用人という立場には変わらない。課長だろうが部長だろうが執行役員だろうが、経営者によって雇用されているただの使用人だ。

資本家は利益を生み出す仕組みを所有し、お金を働かせているのである。株式を所有するということは、株式会社の構成員として社員権を持つことである。株式会社は、事業で得た利益の一部を原則として出資比率に応じて配当という形で株主に分配する。

金融リテラシーの乏しい愚かな人々は、株というと短期的な取引などを想像し、すぐ儲かっただの損しただのというくだらん話をしがちである。もちろん市場での評価額や売買益も大切ではあるが肝心な点はそこではなく、株を持つということは利益を生み出す装置である株式会社のオーナーとしての権利を持ち、従業員の人々に働いてもらって、その結果として得られた利益の一部を配当という形で享受するということなのだ。これこそが株式を保有するという意味なのである。

このことから次のことが言える。

まず、真に資本家足り得るためには、現物の株式を保有することが大切である。投資信託は、あくまで組成されたファンドの受益権を保有しているにすぎない。株主としての権利すなわち議決権を持つためには、株式の現物が必要である。

次に、インカムゲインに着目することが大切である。流通市場における株式の売買益いわゆるキャピタルゲインは、真の利益ではなく副次的な産物である。理論上の価値こそが大切で、流通市場にて価格形成された評価額はあくまで市場参加者による取引価格でしか無い。

最後に、株式を保有するということは、株式会社のオーナーの一人となり、事業の一部を所有するのだという自覚を持つことである。当事者意識をもってこそ、本当の意味での株主であると言える。だからこそ投資判断を満たした企業の株式を長期に渡って保有することが当然であると言えるし、ましてや一度も配当を受け取らずに株式を売却するなんてことはもってのほかであることが自明である。投資判断の際には、投資先の事業が崩壊して無くなるまで株式を保有し続けるくらいの覚悟が必要なのである。

ウォーレン・バフェットも、ビジネスそれ自体に注目しろとか、株券を買うのではなくビジネスを買うのだとか、様々な名言を残している。全くその通りだ。人々が恐怖におののいているような株式市場のバーゲンセール中に、優れた事業をおこなっている企業の株式を少しずつ買い集めるような姿勢が大切である。

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