三國志Ⅴには洛陽、長安、弘農、許昌、漢中、梓潼、成都の計七都市の戦場マップにおいて関が登場する。前回、関は防御 350 の城と同等の地形効果 16 を有すると書いた。隣接する平地・山・水にそれぞれの地形の陣で構えたとすると地形効果は 12 となり、その差は 4 となるため補正としては 12% と小さめの値となる。この値だけを見ると、それほど補正としては高いわけではないように思える。ただ関にはその地形の都合上、隣接する 1 部隊のみしか直接攻撃することができないという数値だけでは読み取れない制約がある。先陣を除く後続部隊は後ろから弓矢で射撃するか、挑発などの計略を繰り出すくらいしかできず、大軍に侵攻されようとも関に強力な部隊を配置しておけばその進軍を食い止める防波堤として大きな役割を果たす効果がある。もちろん防衛側も関の内側から弓や計略などで援護することが可能であり、隣接国から援軍部隊が到着するまでの時間稼ぎもできる。このように数値だけでは読み取れない効果があるわけだ。
地形上の条件として、隣接効果も攻防互いに 1 部隊までしか隣接できないという制約もある。したがって戦いが不利にならないためには関に配置した部隊に隣接する部隊を必ず配置しておくことも忘れないようにしたほうが良い。同討や混乱を食らわないよう、関に知力の高い軍師や沈着持ちを配置するのも良い。反計はなかなか使い所の難しいスキルだが関の防衛では役立つかもしれない。反対に一般的には有用なスキルであるはずの無双については関をめぐる攻防においてはあまり出番が無いかもしれない。
以前にも書いたとはいえ、あらためて関にまつわる地形について確認しておこう。今回の記事では三國志Ⅴのゲーム内に登場するすべての関を掲載する。
<洛陽>
西の函谷関、東の虎牢関という二つの関に守られた後漢の首都。
弘農、宛、許昌と南方からの洛陽盆地に至るまでの東西南の侵攻ルートをすべて関で受け止めることができるため、戦略的にも重要な意味を持つ。ただでさえ洛陽は最大の人口を擁する生産力の高い大都市であるため、ここを拠点として確保できるかどうかで勢力間の力関係にも大きく影響することだろう。河北を制しているならば、洛陽は戦略的に南方勢力を食い止めるための最後の要塞としても機能する。唯一の弱点は河北の鄴・晋陽から水軍で洛水を南下して攻められることだ。
また、このマップは侵攻側の初期配置と防衛側の初期配置が非常に近接しているというのも特徴のひとつである。本作における戦では必ず防衛側からターン開始となるため、すなわち防衛側は初手にて乱射や幻術などの強力な技、あるいは火矢や火計を連発して関の前を炎上させるなど先手のアドバンテージを最大限に活かして攻撃をすることが重要となる。このようにした場合、たとえ精鋭部隊を大兵団で送り込んでも洛陽を陥落させることはなかなか難しくなる。さすがは歴史ある中華王朝の都といったところだろう。
左右の関どちらから侵攻されても対応できるよう、最低でも二部隊、できれば関の内側からも攻撃をおこなう部隊、東西に遊撃する部隊をさらに数部隊は最低でも洛陽に配置しておきたい。初手から攻防の部隊が近接するマップであるため、隣接国から援軍を送っているようでは間に合わないのだ。そして何より、洛陽という都は大軍を駐在させてでも守り抜くだけの価値がある。また洛陽は長安や許昌や鄴といった重要都市と近く、かつそれらの中央に位置するため、これらの重要都市に援軍を送り込むためにも洛陽に大軍を駐在させるのが適している。強行スキルがある将だとなお良いだろう。
<長安>
シルクロードの起点でもあり、洛陽と並んで中華王朝の首都として歴史ある都。
安定、漢中、下弁、弘農からの侵攻ルートをやはり関によって受け止めることができる。長安を抑えておけば少なくとも西の守りは完璧である。このマップで特筆すべきは、斜谷関の外側にも渭水を挟んで二つの城があるところである。関の外の城で防衛戦を繰り広げても良いし、最初から都と関に籠もり待ち構えるのも良い。
ここは洛陽と同様に二つの関があるとはいえ、内側は関を往来しやすいのに対し、外側から関を行き来するのは簡単ではないため、守るべき関はひとつに絞られるケースが多く、洛陽ほどはたくさんの部隊を配置しなくとも事足りる。とはいえ重要都市であるので、敵勢力と隣接する前線であるならば有能な将と強力な部隊を配置しておきたいものである。
<許昌>
曹操の本拠地は鄴であり、後漢末に遷都し漢の丞相として政務を執ったのが許都である。
関を迂回するためには濄水を渡河するしかない。平地が多く比較的攻めやすいはずの中原の都市であるにも関わらず、水軍で一気に河を伝って攻めない限り、関に侵攻を阻まれるというきわめて堅牢な地形となっている。水軍が無い場合、たとえ河を渡ったとしても、水辺から反撃されて上陸を阻まれることだろう。さらに、許昌を語る上で無視できないのは関だけでなく城の配置も堅牢なことだろう。
全マップで唯一すべての城が密集する地形であるため、ここに大部隊を配置して籠城したなら、攻め落とすのは非常に困難となる。たとえ水軍で渡河して南から許都を強襲したとしても、その後の平地に密集する六つの城からの集中砲火を耐えなければならないのだ。 CPU の戦術はあまり利口でないのでさほど問題にはならないが、プレイヤーが人間の場合、ここに大部隊を配置されると攻め落とすのは困難を極める。おそらく隣接する国に将兵を誘い出して個別撃破などする必要が出てくるだろう。そういう意味では、一都市で引きこもりプレイをするにあたっても適した都市とも言える。
<弘農>
長安から洛陽間の黄河南岸に位置する要衝。
見ての通り、洛陽からも長安からも関に阻まれるという特徴的なマップである。ここに能力の高い将を配置した場合、なかなか攻め落とすことは容易ではない。
そもそもの問題点として、弘農が戦場になるということは、隣接する洛陽または長安が敵勢力に支配されているということを意味するのだから、戦況としてはきわめて混沌とした状況にあると言えよう。早めに洛陽・長安の両方を陥落して手中に収め、勢力の地盤を決定的に固めることが必要だ。弘農が戦場になってしまうようではダメでそうなる前に洛陽・長安を死守しなさいということだ。
<漢中>
長安と巴蜀の間に位置する、軍事的にも重要な要所。
梓潼からの侵攻を関によって完璧に阻むことができる。漢中を収めていて梓潼から侵攻された場合、関と近くの城を中心に全部隊を配置して、陽平関を死守するのが良いだろう。この場合、関を迂回するためには戦略的には下弁を経由することとなる。下弁を陥落し、その後漢中を攻めれば関を迂回できるのである。で、その下弁はと言うと比較的攻めやすい都市であるため、しっかりと都市の地形を意識して戦略を組むならば、関の意味は限定的であると言える。
<梓潼>
益州を治めた劉備によって広漢郡の一部を割いて梓潼太守に霍峻を任命した都市。
二重に関があるという険阻な地形である。もっともここは漢中と同様、下弁経由が迂回ルートとなる。城が河に隣接しているため、水軍を送り込んで河伝いに攻めたならば、少なくとも関の意味はなくなってしまう。
<成都>
ご存知、劉備が即位した蜀漢の都。緜竹関と錦水に守られた要衝である。
この関も梓潼と同じく二重になって成都を守っているのだが、ゲーム上はどういうわけか関と関の間にもひとつ城があるというやや歪な配置となっている。雒城かと思われる。この城をどう使うのかだが、少なくとも緜竹関を攻められているときにこの城に配置するのは負傷兵を回復するような場合だろう。個別撃破されてしまうのでこの場合は籠城には適していない。錦水を渡河して南から侵攻され、都を維持できないときに、緜竹関を挟んで引きこもるという使い方はできる。とはいえ、仮にそれで持ちこたえたとしても結構ピンチな状況であろう。この場合、都を中心に部隊を配置し、錦水の水辺を死守したほうが良いだろう。