以前は、ミニベロの走行性能の低さから iruka の実用性を否定してきたが、最近になってその考えが少し変わって、ミニベロも案外悪くないと感じるようになってきた。都心をゆっくりと走るにはそれなりに向いている。例えば、渋谷の交差点や原宿の竹下通り、新宿の歌舞伎町や新大久保のイケメン通り、上野のアメ横や秋葉原の電気街といった観光客や買い物客で混雑するエリアでは、ミニベロならではの小回りの良さが光る。歩行者と同じくらいの遅い速度でも走行でき、狭い路地でもスムーズに進めるため、比較的安心して通行できる。この点では、ロードバイクやクロスバイクでは速度を落としてしまうことでせっかくの機動力を発揮できないし、いかにも自転車という威圧感があり歩行者で混雑したような道では見るからに邪魔である。一方でミニベロであれば比較的に違和感なく人通りにも溶け込むことができるし、小回りと軽快さがあるので街の探索をより楽しくしてくれる。
ミニベロの最大のメリットは、やはり何と言ってもそのコンパクトさから室内保管ができることだ。現在のマンションではロードバイクやクロスバイクを室内に持ち込むことができない。これを持ち込もうとするとエレベーターなどを占有する面積が広く他人の邪魔になるし、高級なマンションでは共用部の壁や床を汚損したり傷つけることが絶対に許されない。これに対しミニベロなら折り畳んで輪行袋に入れてしまえばただの手荷物扱いとなり持ち込みも許可される。部屋でいつでも自転車の状態をチェックできることは、その外観を保つだけでなく安全性の観点からも望ましい。タイヤの空気圧やブレーキ、駆動部といったパーツの状態をこまめに確認できたり、傷や汚れをすぐに発見できる。自転車が生活において常に目の届くところにあることで、メンテナンスも自然とこまめに行うようになるというわけだ。
クロスバイクである ESCAPE R3 は、やはり都内の長距離移動に最適だ。都心に住んでいるとはいえ、ときには遠くの区まで行きたいこともあるし、東京の反対側方面や郊外に向かうとなればトータルで 30km 以上などすぐに超えてしまうのでそれなりの距離となってくる。そのようなときにクロスバイクの高速性能が大いに役立つということは東京 23 区を制した ESCAPE R3 の実績が証明している。もし同じことをミニベロでやろうと思ったらとても大変だし、そもそもそのように長距離を走行する用途の乗り物ではない。ミニベロである iruka はのんびりと街並みを楽しむには最適だが、いざというときのスピードはクロスバイクには到底かなわない。急いで目的地に向かう必要があるときや、長い距離を少ない時間で効率よく移動したいときにはクロスバイクを選ぶべきだ。都心を巡るにはミニベロで十分だし、時間さえかければ長距離移動も可能ではあるが、用途に応じてクロスバイクを使い分けることで、より目的にあった効率的な移動をすることができる。
最近、またいろいろとカスタムやメンテナンスをした。エバーズの防錆セラミックオイルでチェーンの注油を以前よりこまめにするようになった。チェーンのメンテナンスは特に重要で、防錆措置を施すことで湿気の多い環境でも錆びにくくなり寿命が延びるし、何より走行が滑らかになる。
iruka では、見栄えの悪かった後輪のカバーを除去し、ベルを小型化するために小さいものに交換した。これで見た目がスッキリし街中を走る際に一層フィット感が増した。またベルの音が小さく優しいことは、危険な状況になる前によりカジュアルに鳴らすことができるので、結果的には安全性に寄与すると考えた。
ESCAPE R3 ではリアディレイラーの調整をした。外装ギアの B テンションアジャストボルトが緩んで飛び出している見た目がどうしても気になってしまい、これをもう少し締め込んだ状態を基準として調整をおこなった。
なお、これ以外では、普段の買い物など日常生活に使うためのサイサリスローグの使用頻度も高くなってきたこともあり、ブレーキの効きを改善するためにローラーブレーキのグリス注入とブレーキシューの交換も実施した。都心では出番が少なくなると思っていたが、自転車が中心となる東京中心部での生活ではこのようなシティサイクルの利便性が非常に高く、おかげで予想に反して大活躍だ。
用途が異なる自転車では、当然のことながら走り方だけでなくルートの選択も異なってくる。例えば ESCAPE R3 ではその直進性能を発揮するために都道など大きめの車道を走ることもしばしばある。一方で iruka では広い車道よりも裏道や小さい路地、ときには歩道なども選択して、ゆったりと都会の街並みそのものを楽しむのが最適だ。裏路地や細かい道を行くと、都心からわざわざ遠くまで離れなくても、近場で意外な発見があったりすることもしばしばある。もう少し iruka の乗車率を増やして、ミニベロならではの利点を掘り下げていくのも悪くはないかもしれない。