三國志Ⅴのゲーム上には各勢力の資源を示すものとして「金」と「米」という表示がある。まず金についてだが史実においては戦乱のため通貨の価値が暴落してインフレーションが起こりそのため実物資産の絹などが通貨代わりに用いられ俸禄も現物支給であった。だから金は「絹◯疋」などと読み替えたほうが良いかもしれない。また米だがこの時代のレーションとしては米はあまり食されていない。米や小麦に比べて保存が効きやすい黍が一般的であり、これに野菜や魚や調味料を加えた粥や、加工した麦を保存できるようにした胡餅と呼ばれるパンが主食である。庶民の食事としても、少なくとも黄河流域の主食は米ではなく粟が多く、少し上等なものとして黍、大麦も食べられていた。だから米は「兵糧」「糧秣」「干粮」などと読み替えたほうが良いかもしれない。

おそらく日本の戦国時代をモチーフにしたゲームを開発した日本の会社が作ったので、場所も時代も日本とは全然違うのに同じノリで作ってしまったのだろう。当時は現代ほど資料も充実していなかったので仕方なかったのだと思うが、たとえば文官・武官の区別がなく将がすべて「武将」と表記されてしまっているのも帝を傀儡として独自に発展した日本の武士政権ならではのものである。現代になってもすっかり「武将」という名称でそのまま定着してしまったので罪は大きい。

さていきなり話は逸れたが三國志Ⅴには他の作品と同様、追い詰めた敵君主に降伏勧告することができる。敵を残り 1 都市に追い詰めさらに圧倒的な国力の差がある場合に成功することがある。具体的な条件は Wiki にも書かれているが、この中で敵対度が 60 未満という条件が必ず必要となる。もちろん敵対度が低ければ低いほど降伏勧告の成功率は上昇する。ゲーム中の表記における金または米を最大値まで持参すると外交の使者が誰であろうともたとえ敵対度 100 でも進物贈呈に応じるので、これを 3 回ほど繰り返すことで簡単に敵対度を 0 にすることができる。

前回、建業を陥落させ中華を統一する流れについて記述したので、今回はあえて統一を目前に会稽へと追い詰めた孫権を降伏させる例を示そう。まずは武宣皇后卞氏を使者として派遣する。金を送ると兵士を募る資金として敵に流用されてしまうことがあるため、どちらかと言えば糧秣を送ったほうが良い。

続いて文徳皇后郭氏を使者として派遣する。このように外交の使者はそこそこの政治力と魅力があれば誰でも良い。

さらに文昭皇后甄氏を派遣する。敵対度が毎回 30 程度低下するので、この頃には孫権の強硬な態度も軟化している。あれだけ多数の将兵を殺戮されたのにこの程度の進物で態度を変えるのも不自然な気もするが、そこはゲームなのだから仕方がない。

敵対度が 0 になったところで、最後に曹操自ら降伏勧告に赴く。

総合戦力に 30 倍以上の差があると敵は降伏に応じる。この総合戦力とは将兵の武力・勇名・兵士数・訓練・士気を元に算出した内部的な数値の全員分合計によって求められる。

孫権が降伏し魏の臣下となった。こうして無事、無血開城にて統一が果たされ、孫権存命のままエンディングを迎えることができた。

続いてエンディングの話だが、曹操、劉備、孫権、孫策、袁紹、呂布、董卓、仙人には専用のエンディングが用意されている。エンディングには 3 人の臣下が登場するが、一部の君主には内部的に優先して登場する人物が設定されているようである。たとえば劉備のエンディングであれば諸葛孔明、関羽、張飛の 3 人が登場し、漢の再興を果たした劉備に祝辞を述べる。ではこの 3 人の枠が魏の曹操の場合はどうなるか。これは荀彧、夏侯惇、許褚が設定されているようだ。荀彧は歴史イベントで死亡するのでその場合は荀攸、荀攸も没している場合は知力の高い軍師となるが大抵の場合は司馬懿となる。

夏侯惇曹丕の時代に魏の大将軍となっており曹操にとっては君臣の別を越えた親友のような存在だったのだからまあ妥当であろう。

曹操に我が樊噲であると評された許褚。宿衛を守るボディーガードであったのだから張飛枠で登場するのもまあ納得できる範囲内である。

本来なら建国の功臣である曹操廟の二十五功臣の筆頭である曹仁や程昱が登場してほしかったところであるが、三國志Ⅴが発売された 1995 年頃はまだまだこの手のゲームは三国志演義をベースとしていた時代であるので、まあこれはこれで良いだろう。

では最後に、魏の武帝・曹操が崩御し文帝・曹丕が皇帝となった場合は誰がエンディングに登場するであろうか。曹操は史実では 220 年に齢 66 歳にて没しているがゲーム上では 233 年頃、年齢にして齢 80 歳手前くらいまで生きることがある。この場合、子の曹彰や曹熊のほうが先に薨御する。

曹操のあとを継ぎ曹丕が皇帝となった。アイテムを継承し「幻術」や「弓神」や全陣形習得などが備わっている。また配下の忠誠度が低下してしまうが、あらかじめ代替わりに備えて相性の良い将のみを前線に配置し、すぐに将の忠誠度を全員 100 にしてしまえば何ら問題はない。後方都市の太守は義理が高い者を任命しておけば反乱も起こらない。

あえて義理の低い太守に西涼で反乱を起こしてもらい、まず残党の孫権を滅ぼしたうえ、自ら親征して賊を鎮圧した。これで大陸統一である。

そしてエンディング。曹丕は専用のエンディングが用意されていないため、汎用のエンディングとなる。まずは趙雲が登場……。

次に馬超……。

最後に司馬懿。

汎用エンディングでは知力の高い軍師と武力・勇名の高い将が登場するようだ。以前も書いた通り三國志Ⅴの時代はまだまだ三国志演義がベースであるため劉備の配下が特別に優遇されており、そのため能力値の高い旧劉備軍の将が曹丕に祝辞を述べるという珍妙な光景が繰り広げられることになった。

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