あまり語られることは多くないが三國志Ⅴの DS 版以降では、シナリオの開始時に君主を変更する機能が追加されている。たとえば劉備の代わりに関羽を君主にしたりとか、劉禅の代わりに諸葛亮を君主にしたりしてプレイを開始できるのである。従来の作品ではこの機能が無かったため、あえて君主を戦死させて代替わりさせるなどしなければならず大きな手間であった。それがデフォルトの機能でスタート時点から君主変更できるようになり、配下の将の忠誠度などもそのままとなるため、これはなかなか良い機能だ。

もちろんオリジナルの新武将を君主にして既存勢力でプレイするといったことも可能。

あらためてこの君主変更機能について整理する。
・配下の忠誠度は相性などに関係なくそのままの値となる。
・旧君主は新君主の配下となり、相性などに関係なく忠誠度は 100 となる。
・旧君主の所持していたアイテムのうち玉璽のみ新君主のものとなる。
・その他のアイテムについては旧君主が所持したままとなる。
・シナリオ開始時に表示されるストーリーはデフォルトのまま。

このうち、アイテムの扱いが厄介だ。玉璽というアイテムは臣下が所持することができず、そのためか君主を変更した際に新しい君主に自動的に引き継がれるのだが、それ以外の旧君主の持っていたアイテムが引き継がれない。特に最大勢力であることもありアイテムの所有数が最も多い曹操でこの機能を利用しようとすると、臣下となった曹操が爪黄飛電や孟徳新書など多数のアイテムを所持したままとなってしまう。アイテムの没収は、名声こそ低下しないものの、没収された将の忠誠度が 30 も下がるうえ在野に下ってしまうこともあるため行使しづらい。

曹操が持つアイテムといえば以下が主たるものとなる。
・倚天の剣:最強の武力上昇アイテム。これはまあ曹操がそのまま持っていてもそこまで不都合が無い。ただより腕っぷしの強い猛将に下賜したい。
・孟徳新書:沈着技能付与。曹操には沈着が無いため、これもそこまで不都合が無い。ただ少し知力を上昇すれば軍師になるような知将に下賜したい。
・爪黄飛電:速攻技能付与。曹操の速攻と完全に被るため、退却成功確実という効果もあるものの、ほぼ無駄といえる。できれば他の将に下賜したい。
・青釭の剣:倚天だけでなく青釭も持っている場合、効果が重複し完全に無駄。没収したい。

というわけで、結局のところ全部没収したいのである。ただ没収は前述の通り大きなマイナスがあり、命令書も消費されてしまうので、なぜ君主を交代した際に全部引き継がれる仕様にしなかったのかと惜しまれる。

そこで着目したいのが 3DS 版から追加された新シナリオの呂布討伐戦、五路侵攻戦、覇王袁紹である。この追加された新シナリオでは、なぜか持っているはずのアイテムを持っていない、物語上いるはずの将が配下になっていない、いくつかの勢力の兵数や物資があきらかにおかしいなど設定ミスが目立つ。ただこれを逆手に取れば、このアイテム引継問題を緩和できる。

各シナリオでの曹魏君主のアイテムを整理する。
・覇王袁紹:曹操が所持するのは爪黄飛電と孟徳新書だけで、なぜか倚天の剣と玉璽が無い。
・五路侵攻戦:曹丕が所有しているのは倚天の剣のみ。玉璽すら行方不明。おまけになぜか皇帝に即位していないためこの時代でも献帝の使者が来る。
・呂布討伐戦:内政値などはさておき、少なくともアイテムに関しては特におかしなところはない。曹操は上の 4 アイテムをすべて所有。玉璽を所有するのは袁術。

この中で注目は五路侵攻戦である。たとえば、曹操の後継者に曹丕ではなく曹植が指名されていたら、といった if シナリオを遊ぶモードだと割り切って、三国鼎立の時代を任意の将を君主にして楽しむのだ。その目線で考えた場合、曹丕から没収するのは倚天の剣のみで済むし、忠誠度が低下するのも後継者争いに負けたからという理由付けが一応できなくもない。また覇王袁紹も、そもそも曹操が官渡の戦いで敗北したらという if シナリオであるため、アイテムの幾つかが無かったり于禁がいなかったりするのは敗走したときに何らかの理由で失ったと考えれば一応は理由になる。そこで君主を変更することで、敗れた曹操を庇護して別の者が君主になって勢力を立て直すという、今までにない設定でプレイを楽しめる。爪黄飛電と孟徳新書だけならそのままにしても完全に無駄となるわけではない。

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