三國志Ⅴだけでなく、この手の戦略ゲームにおける定石としては、すべての敵勢力とやり合うのではなく、一方の勢力と同盟を結び二正面作戦を避けるのが戦略の基本である。ところが三國志Ⅴにおいては、あえて敵勢力同士の同盟を結ばせ、二正面作戦をとるほうが有効な場面というのがある。後半の三国鼎立や五路侵攻戦、星落五丈原のような大国対大国のシナリオでは特にそのようなケースがある。それはどのような理由か。
それは同盟勢力に援軍を要請する際に「防衛側で同盟勢力に援軍を頼む場合、使者として君主所在都市に将を一人派遣しなければならない」という仕様のためである。
例を挙げて説明しよう。プレイヤーを魏の勢力とする。魏が孫権の支配する建業に攻め込んだとする。このとき防衛側の呉は同盟している蜀に援軍を要請する。そこで陸遜が成都に派遣されることになる。成都は遠く、援軍到着までには結構な日数がかかるため、援軍到着前に建業が陥落する。すると無傷のまま陸遜とその配下の兵士が捕虜となるのだ。また魏が劉備の支配する漢中に攻め込んだとする。このとき防衛側の蜀は同盟している呉に援軍を要請する。そこで姜維が建業に派遣されることになる。建業は遠く、援軍到着までには結構な日数がかかるため、援軍到着前に漢中が陥落する。すると無傷のまま姜維とその配下の兵士が捕虜となるのだ。つまり、魏から見て呉と蜀が同盟していた場合、同盟勢力に援軍を要請するために、敵は常に将を一人派遣した状態となる。
このように、大勢力となった場合、あえて遠くの同盟勢力に助けを求めるように敵勢力同士を同盟させたほうが、かえって戦局が有利になってしまうというわけである。仮に戦が長引き、援軍が到着してしまうと兵力差が逆転しかねないが、圧倒的な戦力差があり目標都市を少ない日数で陥落させる自信があるならば、むしろ敵同士を同盟させたほうが良い。さらに言うなら、まずは大部隊にて目標都市の敵部隊をことごとく殲滅した上で援軍が到着するのを待ち、到着した援軍をさらに集中砲火で殲滅するという、両方の勢力を一網打尽にするという作戦もある。これは敵側に戦力の逐次投入をさせるという戦略になる。
援軍要請のために部隊を派遣しなければならないというシステムの欠陥を利用したような卑怯な作戦であるが、実際にプレイしてみると結局敵同士を同盟させたほうが有利だったという結果になることは少なくない。