以前、三國志Ⅴにおける防衛力の最も高い都市は許昌か洛陽であろうと書いた。これは地形はもちろんのこと、都市の生産力や大陸における要衝としての位置まで考慮してのことであるが、ここでひとつ疑問がある。単純に要塞としての強度のみを考慮したら弘農こそが最強ではないかという疑問である。なぜなら弘農は洛陽と長安という二大都市のみ隣接しており、さらにその東西両面が函谷関と臨潼関という関に守られた難攻不落の都市であるからだ。
弱小君主の一人である李傕で弘農に引き籠もって防衛を固める。敵は曹操軍 10 万以上の大軍である。
しかし弘農であれば敵の進軍を函谷関で足止めすることにより時間を稼ぎ、防衛成功することができる。東西いずれも関に守られているため、たとえ隣接する洛陽・長安の両方から挟撃されたとしても対応が可能である。
では弘農は引き籠もりプレイに適した地なのであろうか。その答えは否である。理由を挙げよう。
・弘農が戦場となる時点で洛陽・長安のいずれかが敵地であり、いずれも人口や生産力の高い大都市である
・弘農から侵攻しようとすると洛陽・長安共に関に阻まれる形となるため、進軍が困難で八方塞がりとなりやすい
関について地形をあらためて考察すると、弘農から洛陽への進軍は函谷関・虎牢関に阻まれ、長安への進軍は潼関・斜谷関に阻まれることがわかる。またこれらはいずれも大都市なのであるから、何度でも募兵して弘農に大軍を送り込むことも可能である。いくら弘農がすべてのルートを関に守られた都市であるといっても、弓を得意とした部隊を多数配置し延々と関を射掛けられたなら弱小君主の軍では持ちこたえることができない。守備の要が所詮は関一枚であり、その先には城がふたつしか無いのだから、少なくとも対人戦では持ちこたえることが難しいであろう。つまり弘農が戦場となる前に、洛陽または長安の防衛を固めこれらの都市が陥落しないようにするべきなのだ。
では弘農はあまり価値の無い都市なのであろうか。ここで、人材登用拠点としての弘農の価値を考えてみる。
以前、三國志Ⅴにおける敵勢力は人材引き抜きを隣接都市に対してしか仕掛けてこないと書いた。無印版ではこのような制限は無いが、三國志 DS3 以降のバージョンでは CPU は人材引き抜きを隣接都市に対してしか仕掛けてこない。そこで弘農を人材登用拠点とし、人事担当を弘農に配備しておくのだ。こうすることで人材登用直後に忠誠度を上昇させなくても敵対勢力に引き抜かれる心配が無くなるのである。弘農はいわば袋小路の都市と同様に安心して人物を収集できる人材登用拠点として活用ができるのだ。
もっとも許昌も人材登用拠点としてのポテンシャルは高い。なぜならまず隣接している都市が洛陽・鄴・譙・陳留の 4 都市しかない。さらにこのうち洛陽・鄴・譙は魏の五都でありいずれも中原の重要拠点である。陳留は曹操の挙兵の地であり魏と馴染みが深くやはり重要拠点である。魏にとって許昌を中心に見るとこれら周辺都市はいずれのシナリオにおいても初期段階で自国領としている可能性が高い地域である。したがって許昌は早い段階で敵勢力と隣接する前線ではなく後方都市という形になっていることがほとんどである。そこで許昌に曹操自身や参謀や政治力の高い軍師集団を配置しておくと、ここを拠点にどんどん人材を集めていくことが可能である。このとき許昌は弘農の上位互換のような要塞都市として機能するのである。
このように確かに弘農が人材登用拠点として活用できるのは一時的ではあるが、それでも関中を領土に有する初期シナリオの曹操や何進・董卓・李傕などにとって、洛陽と長安を繋ぐ中継点としてだけでなく、重要な意味を持つ都市であることがわかる。