チャールズ・エリスの「敗者のゲーム」はあまりにも有名な名著の一つであり資産運用におけるバイブルと呼べるものである。資産が多少でもある者ならば、何度でも読み返すべきだ。

この書籍では個人投資家のための十戒として次を挙げている。

[個人投資家のための十戒]
1. 投機的判断で動いてはいけない。
2. 噂につられて売買しない。
3. 税務上有利という理由で動いてはいけない。
4. 自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。
5. 商品取引は考えものである。
6. 証券会社の担当者に気を付けなさい。
7. 新金融商品に投資してはならない。
8. 債券に投資してはいけない。
9. 決してお金に心を奪われない。
10.直観を信じてはいけない。

マーケット・タイミングに乗じることが不可能であるという主張は、シーゲルマルキールと共通する。

なぜこれ程までに多くの偉大なる先人たちが短期売買をして投機に走るなと言っているのに、スマホ等で思い付きで頻繁に売買する愚かな輩が後を断たないのかは不明だが、庶民がギャンブル好きでヒマだからと思うしか無い。

さて、エリスやシーゲル、マルキールらは米国人であり、それぞれ主張(ドルコストなのかフルインベストメントなのか等)の差異はあれど米国の株式インデックスに長期的に投資せよという点では一貫している。

実際のところ先進国株式とくに米国の株式の長期的なパフォーマンスについて説明は不要であろう。 S&P500ダウ平均株価のチャートを見るが良い。

ここからが本題なのだが、それではなぜ個人投資家は日本株に投資するべき理由があるのだろうか。それは世界で唯一日本だけに存在するといっても過言ではない稀有な制度「株主優待」を理由とする。

株式の大原則に「株主平等の原則」というものが存在する。

株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。

これに対し株主優待とは「所有株数に応じて、優待内容が変わることが多いものの、所有株数に完全に比例はせず、概ね名義ごとに付与されるため、零細株主であるほど金銭に換算した利回りが高い。」という制度であり、上記の原則に反するものとなっている。すなわち世界で日本の証券市場だけが個人投資家を優遇している歪んた状態にあることを示している。

機関投資家と話してみるとわかるが、彼らにとって株主優待制度は頭痛のタネである。彼らの運用するインデックスファンドを構成する個別株から大量に届く株主優待のうち、金券類については金券ショップ屋に売却して換金しているものの、現物や割引券といったサービスについては処分していることがほとんどである。そもそも株主優待は一定の株数で頭打ちになるので、利益剰余金の分配については配当の方が運用側としては当然有り難い。さらに、日本の国内企業から国外の投資家への株主優待の発送は実施されていないため、外国の投資主体は日本株を所有しても優待の恩恵を受けることはできない。これもまた制度の不平等な点である。

配当はせいぜい 3 〜 4% 、高いもので 5% を超えれば良いほうだが、株主優待については 1 単位で見た場合それら利回りをはるかに凌ぐものがたくさん存在する。また、日本の所得税法においては、給与所得者であって株主優待を含む給与以外の収入が 20 万円を超える場合、雑所得として確定申告が必要であるが、実際には現物や割引サービスを金銭的に評価することは困難であるため、優待による所得を確定申告しているといったケースはほとんど聞くことが無い。つまり NISA などに頼るまでもなく、実質ほぼ非課税といった状態で運用されているのだ。こんな夢のような市場が存在するのは日本だけである。日本国内に在住する日本人の個人投資家だけが特別に高い利回りで株式を保有することが許されているのである。

本来平等に扱われるべき株主の権利が、個人投資家を優遇するように設計されている。このような状態が放置されているのは日本だけなので、すなわち個人投資家は日本の証券市場に投資する妙味があると言える。逆に言うと、株主優待制度を除いて日本の株式に対し積極的に投資する理由は存在しないと断言して良い。

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